Material x Design

Material

DBSの素材はステンレスである。ステンレスは、鉄よりも錆びにくい特徴がある。こういったプロダクトの多くは、安価で入手性が高い黒皮鉄がよく使われる。しかし、黒皮鉄の黒皮はただの酸化被膜であり防錆機能は望めない。時間とともにボロボロと剥がれ落ち、新品の時のビジュアルは瞬く間に醜くなる。ビジュアルだけでなく質感すらも失われプロダクト本来の美しさが損なわれる。 対してステンレスは錆びにくい。が、いずれ錆びてしまう。ただ、錆びた場合に鉄のように朽ちてしまわない。数あるステンレスの中から比較的熱伝導率が高いものを選定し、温度上昇による変形とサビを極力抑える素材を選んだ。

Texture

DBSは、マットな質感を想起させる、自然な素材感を携えた黒にこだわっている。Firepitというプロダクトの特性を考慮した方法、そして「美しいプロダクト」であることを優先した色の施し方をしている。 金属に色を与える場合、代表的な方法にはメッキや塗装が挙げられるが、どちらの処理を選択しても耐熱性に問題があり、いずれも200°~400°が限界である。プロダクトのデザインを紙に起こした時、どうしても黒にしたい思いがあった。DBSでは素材にステンレスを使用しているが、特殊な熱処理を加えることで黒い質感を与えることに成功した。本来、車のブレーキパッドなど摺動部に使われる部品に対して耐摩耗性等を付与する技術であり、その副作用として素材が黒くなるのだ。その黒はメッキの黒でも塗装の黒でもなく、素材感を残しつつ少しムラがあり、曇った色合いで、まさに求めていたものだった。同時にこの処理のおかげでプロダクトは傷つきにくい機能も得た。

Shape

一手に熱を引き受けるアッシュトレイにも、Firepit全体の姿形を美しく見せる設計を加えている。複雑に塑性変形させ、熱による変形を最小限にするとともに、凹凸が本体との間にスペースを作り本体への熱伝導を減らし、燃焼の補助となるように空気を底部から吸い上げる構造となっている。デザイン本来の姿が空冷エンジンのフィンのように放熱しやすい構造をしているのも助かり熱変形しにくく、錆びにくく、傷つきにくいものとなった。 このプロダクトは、デザインを追及した上で機能を付与し、美しい姿をできる限り維持できるように設計されたプロダクトである。 唯一、このプロダクトは重い。それは何よりも見た目の美しさを優先した結果である。